くつの小川
2026年03月26日
会いに行きたくなる靴屋さん「くつの小川」。
昭和23年創業、二代にわたり夫婦で営まれてきた履物総合小売店「くつの小川」。もともとは武雄市で下駄を扱う履き物屋としてスタートし、嬉野へ店を移したことをきっかけに現在の店名へと改めた。作業靴や革靴、婦人靴、小中学校の指定靴まで幅広く揃い、暮らしの中の“足元”を長年支え続けている。店先には今も下駄が並び、旅館の中居さんが買い求めていくこともあるという。時代が変わっても変わらず置かれた下駄は、この店の歴史を物語るように静かに存在感を放っている。
店に入ると、小川さんご夫婦が揃って笑顔で迎えてくれる。「そこに座ってください」と促され、向かい合って腰を下ろすのがいつもの定位置。靴を選ぶ前に始まる何気ない会話が心地よく、気づけば時間を忘れて話し込んでしまう。ここは買い物の場であり、人と人が向き合う場所でもある。
開店当時、店の前の通りは買い物客で賑わい、周囲の田畑が区画整理され、少しずつ家が建っていく様子を見守ってきたという。長年気にかけていた交通の便も、新幹線の開通や駅周辺の発展によって大きく変わった。お孫さんの通勤が楽になったことも、嬉野の変化を実感する出来事の一つだそうだ。
「これからも街の在り方を見届けながら、お客さんとの交流を大切にしていきたい」。そう語るお二人の穏やかな笑顔に、この店が長く愛されてきた理由がにじむ。靴を買いに、そして小川さんに会いに。ふと立ち寄りたくなる、あたたかな場所がここにある。