洋品のいけだ
2026年03月26日
人と向き合い続ける衣料店「洋品のいけだ」。
創業72年を迎えるこの店は、婦人用品や肌着、和装小物などを扱い、現在の場所とは異なる地で商いをスタートさせた。創業当初の住まいは波佐見。父親は自転車の籠にハギレを積み、嬉野の店舗まで通いながら商売を続けていたという。取引先の会社で修行を重ね、父親の代から店を受け継いだのが、現在店頭に立つ息子の龍男さんだ。時代の流れとともに取引先は減少し、人口減少の影響もあり、決して営業は順調とは言えない。それでも、創業当初からの常連客が今も変わらず足を運んでくれることが、何よりの励みになっている。昭和58年頃からは婦人服と子供服に商品を絞り込み、時代やお客様の声に耳を傾けながら、本当に求められるものだけを残してきた。その積み重ねが、現在の店頭に並ぶ商品構成につながっている。
先頃、親子で洋服を購入したお客様が再来店し、「今も大切に着ています」と声をかけてくれたという心温まる出来事もあった。商品だけでなく、人と人とのつながりを大切にしてきたからこそ生まれたエピソードだろう。店に一歩足を踏み入れると、龍男さんの温かな人柄と物腰の柔らかさが自然と伝わってくる。店頭では看板代わりの金魚が来店客を出迎えてくれるが、金魚すくいで迎え入れてから今年で9歳になるという。大切に世話をされ、今も元気に泳ぐその姿は、店と人との関係性を象徴しているかのように思える。
穏やかな笑顔で迎え、帰るその瞬間まで丁寧に見送ってくれる龍男さん。その姿に、思わずまた会いに来たくなってしまう。長年にわたり地域に寄り添い続けてきたこの店には、変わらない温もりがある。