花とおもてなしの宿 松園

2025年03月28日
タイムトラベル 『花とおもてなしの宿 松園』 元々は料亭として使用されていた建物は、気品ある雰囲気とどこか懐かしさを残しつつ、大きい入口から視界いっぱいに広がる受付ロビーが開放感を与えてくれる。「いらっしゃいませ」の声かけに、思わず「ただいま」と言ってしまいそうになる程居心地が良い事は、足を1歩踏み入れた瞬間に感じ取る事ができる。ロビーには懐かしいゲームコーナーも設けられており、輪投げや射的なども楽しむ事ができる。客室は22室。和室を中心に温泉付きのリノベーションされたお部屋から、これまで商談や大事な席で使用されてきたであろう広々とした和室まで用途に合った部屋が揃っている。部屋によっては川沿いに位置し、大きな窓ガラスからは春になると満開の桜を見ながら過ごす事ができる。どこかレトロさが残る客室と窓から見える景色とのコラボレーションは、まるで映画のワンシーンのようで、時が止まるとはこのような事を言うのだろう。お部屋の名前も「あかし」や「あおい」「はごろも」「むらさき」など源氏名に沿ってつけられており、廊下のインテリアの黒電話や柱時計、ドアの造りなど、大正ロマン、大正モダン的な雰囲気が好きな人は必ず気に入ってもらえる空間と言える。まるでタイムトラベルしてきたようだ。又、館内のスタッフは長年勤めている方も多く、お部屋の清掃スタッフの最高齢は80歳。長年の顔馴染みからお客様からの支持も厚い。
スタッフが積極的にコミュニケーションを取る様子から、お客様との関係性を大切にしている事が見受けられる。気の張った心を柔らげリラックスしてもらう事を心掛けていると言う。「昔は花嫁修行として住み込みの女性が沢山来る場所だった。」と教えてくれたのは、色気と食い気がポリシーだと言うダンディな出立ちの光武社長。スタッフとして住み込みで入り、花嫁に必要な配膳や所作、料理も全て網羅し実際に皆花嫁になっていったそうだ。料理を学ぶ場所として選ばれていたと言うだけあって、料理は今も松園が胸を張れるおもてなしの1つでもある。県産の旬の素材を使用するのは勿論、お出しするお料理の殆どが手作り。リピーターさんも多い松園は、月単位で料理のメニュー内容を変えている。又、来館の履歴を確認し、器も変えるという拘りだ。
部屋付きの和食懐石のメインは、すき焼き、ステーキ、しゃぶしゃぶから好みのものを選ぶ事ができる。利用客は国内国外問わず、光武社長が自ら駅まで送迎する事もある。心と心の繋がりを何より大切にしている松園だからこそ思わず「ただいま」と何度でも足を運びたくなる人が多いのかもしれない。